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インタラクティブティーチングを看護教育に取り入れてもいいかも

久々の投稿ですが、今回は教育のe-learningの紹介です。 皆さんは病棟で行う学習会をどのように行っていますか? パワーポイントを使って、講義者が一方的に受講生に説明するだけの学習会になっていませんか。 それでは受講生の頭の中には10%程度しか残りません。 また、教え方を知らない人がいくら指導しても、相手の頭にはほとんど残らないでしょう。指導者がスペシャリストであっても。 「じゃあ、どうすればいいの!?」 講義を双方に学びあえる場を作ればいいんです。受講生からの発言(得た知識をアウトプットさせる)させたり、ディスカッションさせることで、知識の定着率を高めることができます。 その教育について学ぶことができるe-learningがあります。 最近、看護教育学でも話題になっている東京大学の中原淳先生をはじめ、たくさんの講師が協力して立ち上げたプロジェクトです。 http://gacco.org 「インタラクティブティーチング」 そのテーマも「聞くだけの授業はやめにしよう!」という内容です。 興味のある方は一度覗いてみてください。すぐ活用できる教育の方法が満載です。 追伸:最近思うことですが、学会は誰のためにあるのでしょうか。学会は最新のエビデンスを広め、聞いた人がそのエビデンスを活用してよりよい看護を提供できるように働きかける集まりだと私は認識しています。しかし、教育講演を覗いても講義者が一方的に話をして終了というものが多いです。これでは聞いた人の頭には10%程度しか残らず、病院に戻ってもその知識を活用することは難しいでしょう。聞いた人の行動変化をさせるような講義を教育的にデザインしていく必要があるんじゃないかなっと勝手に独り言です。少なくとも私はそうしていきたい(TEDみたいな講義もカッコいいけどね笑)。

バイトブロックの装着基準について

経口挿管している患者は、挿管苦痛を訴えることが多い。それは、チューブ留置に伴う疼痛や呼吸器との同調性、話せないことによるストレスなど様々な因子がある。挿管チューブを噛み切ろうとする行為もこれらの苦痛を患者なりに表現している仕草である。挿管チューブは噛むことにより呼吸器からの酸素が途絶えてしまうこともある。医療安全の観点からこれを予防するためにバイトブロックがルーチンで使用されてきた。しかし、バイトブロックを装着すること事態が弊害を生むケースも少なくない。バイトブロックは口腔や皮膚を圧迫し、潰瘍の形成することがある。さらに、口腔ケアを実施するときに邪魔になり、十分な口腔ケアが実施できないこともある。そして、患者もバイトブロックがあること事態が不快であるという患者もいる。そのため、近年バイトブロックを外そうとする風潮がある。 JSEPTIC 看護部のメーリングリストで先日このことについて情報を交換する機会があった。 「他の施設でバイトブロックを装着しない基準があるのか」という質問からであった。その施設はルーチンでバイトブロックを使用することを止め、非適応患者にはバイトブロックは積極的に外していきたいという想いからであった。 その中で様々な意見がメーリングリスト内で飛び交った。 バイトブロックの非適応患者に「脳外以外」「歯がない患者」「意思疎通可能で意識障害がない患者」が挙げられたが、これらを明確に基準としている施設はなく、個人に任せているという施設や、スタッフと相談して決定している施設などがほとんどであった。 挿管患者に抑制を装着する基準などは明確にされているが、バイトブロックにはこれらの基準はない(知らないだけかもしれないが)。バイトブロックは抑制同様 ICU ではルーチン化された文化的な業務である。クリティカルケア領域では患者個々に合わせたケアが要求される。バイトブロックも患者個々に合わせて種類を考え、不要な患者には外すよう関わっていく必要があるのではないか。少なくとも、上記のバイトブロック非適応患者には装着しないようにスタッフ間で相談しなくても良いのではないだろうか。私たちはルーチンで患者さんを看ている訳ではないのだから。

SSCGの和訳が公開!

Surviving Sepsis Campaign:重症敗血症および敗血症性ショックの管理に関する国際ガイドライン(2012年版)の和訳について 突然ですが、敗血症のガイドラインって知っていますか? 2002年に米国集中治療医学会(SCCM)と欧州集中治療医学会(ESICM)、国際敗血症フォーラム(ISF)の合同カンファレンスがスペインで開催され、「5年間で重症敗血症患者の死亡率を25%減らす!」という目標を掲げたキャンペーンが開始されました。 これがよく聞くSSC(Surviving Sepsis Campaign)です。 そして、2004年にSSCGと言われる国際敗血症ガイドラインが発表されたのです。 以前、看護師版の敗血症ガイドラインをブログで書き込みましたが、これもSSCGがよく引用されており、基となっているでしょう。 このガイドラインは4年毎に改訂されており、2008年、2012年にそれぞれ発表されています。 しかし、どこを探しても2012年のガイドラインは英語ばかり、、。 「う〜、、読みたいけど読めない。。」と嘆いていましたが、たくさんの先生方の協力によりついに和訳されました! しかも、SSCGの最新版がSCCMのホームページに載ったのです。 http://www.learnicu.org/Pages/Guidelines.aspx 和訳を直接読みたいという方はこちらを。 http://www.survivingsepsis.org/SiteCollectionDocuments/Guidelines-Japanese.pdf 誰でも気軽に読むことができます。 これを読んで、「治療に口出しをしろ!」と言っているのではありません。 看護師として、チーム員の一人として、共通言語、共通理解をすることが大切なのです。 このガイドラインを読んで、もう一度看護師版の敗血症ガイドラインを読むと視野がさらに広がるかもしれません。 皆さんの参考になれば幸いです。

看護に役立つ論文紹介

みなさま JSEPTICのホームページで、看護師有志で行っている論文紹介をみることができます。 ぜひご覧くださいませ。。 http://www.jseptic.com/nursing_paper/index.html

睡眠とせん妄

一般的には、睡眠とせん妄は深く関連していると信じられているが、実際にはどうどうだろう。 睡眠に関する障害(不眠であったり、昼夜逆転など)は、せん妄の症状(表現系)だったりするので、睡眠障害がせん妄を「引き起こす」のか、結果としてせん妄だから睡眠障害なのかは実はよく分かっていなかったりする、のかもしれない。なんていう疑問に対して調査した研究。 Kamdar, B. B. et al. Delirium Transitions in the Medical ICU. Crit Care Med 1 (2014).  この研究では、患者が自覚する睡眠に関する質とせん妄に関して調査している。 研究は、別の研究のsecondary analysisとして行われた。223人の内科系ICU患者に対して睡眠の質を調査し、せん妄に関してはCAM-ICUで評価した。睡眠の質と、せん妄への移行に関してその関連性を検討している。 結果をいうと、睡眠の質とせん妄への移行に関しては関連性がみられなかった。 実は、ICUにおいては、睡眠の質がせん妄とどのくらい関連しているかは未だ不明。ICUでの睡眠障害は、環境だけじゃなくって、(思ったよりも)侵襲や薬剤によるものが多いと思う。実際に敗血症患者ではメラトニン分泌のリズムが消失するという研究もあるし。それらに対して環境を調整してどのくらい効果が挙げられるのかは、冷静に考えると・・・・どうですかね(うるさくしてもいいと言っている訳ではありません。)? PSGなどを使った客観的な睡眠状況と主観的な評価は違うんじゃないかとか、意見はあるとは思うけれど、どちらにしても、一般的に思われる結果、つまり睡眠障害はせん妄を引き起こす、という結果ではなかったことは興味深い。 まだまだよく分かっていないことはたくさんある。

呼吸器感染症へのアプローチ(看護師版敗血症ガイドラインより)

「Around every 3rd heart beat someone dies of sepsis」心臓が3回鼓動するたびに誰かが敗血症で命を失っている。 前回は看護師版の敗血症ガイドラインを紹介しましたが、読まれた方も多いと思います。 「英語が苦手で、、」という方もおられると思うので、一部を紹介します。 ただし、これはあくまで2011年に発表されたガイドラインなので、このとおりにしなければならない!という訳ではないです。 「へぇ〜、こんな考え方あるんだ。うちではしてないし、これをした方がいいかなぁ。」と思ったら取り入れてもいいかもしれません。 (参考に) grade 1A:エビデンスレベル高い  ⇩ grade 2C:エビデンスレベル低い 「呼吸器感染症を防ごう!(Prevention of Respiratory Infections)」 1.重症患者は頭部挙上30〜45°以上を維持を推奨します。(grade 1B)  保清時やシーツ交換時は頭部挙上を30°以上維持することは難しいので、10°以上は維持できるようにしましょう。 2.72時間以上呼吸器装着患者に対して、カフ上部吸引付き挿管チューブの使用を推奨します(grade1 A) 3.シルバーコーティングされた挿管チューブの使用を提案します。(grade 2A) (銀イオンが抗菌作用をもっており、海外ではシルバーコーティングされた挿管チューブがでまわっており、VAP減少に有効とする報告がいくつかあり、提案という位置づけで紹介されている) 4.ポリエチレンのカフを使用した挿管チューブを提案します。(grade2B) (カフ圧低下の原因は塩化ビニルの素材が原因であると考えられており、ポリエチレンを使用したカフはカフ圧低下が起こりにくいため、カフ圧低下による垂れ込みを防ぎます。これも海外で使われだしています。) 5.カフ圧は少なくとも20cmH2O以上、30cmH2O以上にならない圧で維持することを推奨します。(grade 1C) (今や常識と思われているカフ圧20-30cmH2Oだが、意外とgradeは1Cと低め。基となっている文献は実は20年前のものなんです。) 6.加温加湿器は患者毎

看護師向け敗血症ガイドライン

みなさん、9月13日はWorld Sepsis Dayって知ってましたか?(敗血症なんて興味ないわって言う方もいるかもしれませんが。) 「世界では数秒に1人の割合で敗血症で亡くなる人がいます」、どこかで聞いたフレーズですが、敗血症で多くの命が奪われています。(それでも興味ない?) 敗血症はクリティカル領域ではよく遭遇する疾患です。そのため、医師、看護師、リハビリスタッフ、臨床工学技師などの他職種が連携することが重要とされています。 「Surviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)」は有名ですが、治療がメインで看護師にとってはちょっと難しいかもしれません。 看護師向けのものはないの? 実はあるんです!看護師向けの敗血症ガイドラインが! 2011年に世界クリティカルケア看護師連盟(World Federation of Critical Care Nurses:WFCCN)が63項目の看護ケアを推奨しています。 詳細は Aitken LM, Williams G, Harvey M, et al. Nursing considerations to complement the Surviving Sepsis Campaign guidelines. Crit Care Med 2011; 39: 1800-18 WFCCNで発表されており、世界的には有名ですが、日本ではなぜか知名度が低く、まだ翻訳されたものはありません。 内容は、教育、手指衛生、呼吸器感染症予防のためのデバイスの提案や口腔ケア、カテ感染・SSI・尿路感染予防、ジョク瘡予防、アイケア、END POINTなどが記載されています。看護師向けなので、看護ケアの臨床に活かせそうな内容が紹介されています。 例えば、<手指衛生>の項目では、 1、別の患者の所に行く時や、同じ患者に異なったケアをする時などは手袋をしていようが、潜在的に手が汚染されているため、前後で手指消毒することを推奨します。(grade1B) 2、手の消毒方法はアルコール系の消毒を推奨します(grade1A) 3、目に見えて手が汚れている場合は、石けんと流水で手を洗うことを推奨します。(grade1A) 4、血液など、感染する恐れのあるものに触るときは手袋を使用することを推

せん妄は短期予後と関係がない?

久しぶりにせん妄ネタを せん妄の期間が長いほどは死亡率が高いなどよく言われる。 Pisani, MA, et al. (2009). Days of delirium are associated with 1-year mortality in an older intensive care unit population. American journal of respiratory and critical care medicine, 180(11), 1092-1097. がしかし、これらの多くは観察研究だ。 それと、以前このブログでもせん妄は一枚岩ではなく、もしかしたら、予後にあまり影響を与えないタイプ(せん妄の原因によっては)もあるかもしれないと、別の方が紹介していた。 が、これも観察研究で、あまり大きなことは言えない また実際のせん妄をターゲットとした介入研究では、せん妄の期間を短く出来るが死亡率まで改善するに至らなっていない これら、せん妄をターゲットとした介入研究の多くは、死亡率などを評価するには対象者の数が小さすぎるといった批判もある そこで、せん妄期間を減少させるための介入研究(RCT)とその短期死亡率に関して行われた今回の論文を紹介します Al-Qadheeb, NS, Balk, et al. (2014). Randomized ICU Trials Do Not Demonstrate an Association Between Interventions That Reduce Delirium Duration and Short-Term Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis*. Critical care medicine, 42(6), 1442-1454. この論文では、いくつかの論文をまとめて評価して何か言えないかなーとあれこれ考えるMeta-Analysisという方法を使用して、対象者が少ない事の影響を少なくしようと試みている。 対象となったのは全部で17論文 Risperidone(リスパダール)、Quetiapine、ZiprasidoneなどのAntipsychotic therapyが4論文 Cloni

情報の伝達

暑いですね。 少しご無沙汰になっていたのですが、思うところをひとつ。 看護師が、いろいろ話し合って決定事項をつくいったり、伝達したい事項を伝えたい場合に、医師や他の職種と大きく違うところは、看護師は完全に交代勤務しかしていないので、みんなで集まることはできないというところ。 24人の看護師がいるところで、日勤終了後に集まったって、6-7人しかいない。ただ、施設によっては、夜勤のひと以外は集合とかいって、休みのひとや夜勤明けのひとも絶対参加みたいなところもあるみたいだけれども、そういうのは嫌いだから個人的にはやりたくない(労務管理上はやばいでしょう)。 で、結局、6-7人で話しあって結論を出したからといって、残りの16人が話し合いに参加した気になるかどうかは分からない。あらゆる会議は(理想的には)それに当事者として参加したという気分が重要であるわけで、それがそこでの決定のアドヒアランスにつながったりする。しかし、参加できない以上、そういう当事者意識は作り出しにくいということになる。 看護師同士の情報伝達は、一同に集まることができない以上、限られた情報しかないノートや休憩室トークなどアンオフィシャルな情報伝達によってによって伝わるので、尾ひれがついたり、真意が伝わらないことも多いと思う。ある情報にどういう尾ひれがつくかは、これは病棟の文化や雰囲気によって大きく異なると思う。それらの空気を読みながら、みんなに納得してもらって実行に移してそれを継続するのは結構大変な作業。 こういうところ、この前、○○さんに伝えたんだけど、まだみんなに伝わっていないね、とかいう医師やその他の職種に分かってもらいたいと思う。

患者不在の家族看護

集中治療や救急の現場で、成人患者のケアにあたる人々が家族看護という場合、 家族看護という言葉が(家族とは患者を含めた言葉であるにもかかわらず)患者を除くその他の家族構成員に主眼が置かれているなあ~と感じてしまうことがある。 特に、重症な患者で、患者本人に出来ることが少ない場合に・・・ (家族看護という言葉で、患者から目を背けているようにもみえる。個人的に感じているだけかもしれないが…) むろん、重症疾患患者の家族に対して適切な対応をとることに異論はない しかし、我々の顧客は患者、その人である 家族看護やケアは、患者が最大限の利益をえられるために存在するべきだと思う 小児患者のケアにあたる人々が家族看護という場合には、この点に対する考えが根底にあることがはっきりと伝わってくることが多い。 このことは、そもそも児が家族を必要とする割合が本来的に高いせいかもしれない(たとえば、家族システムが破綻し育児を放棄された児が受ける悪影響は計り知れないことなど)。 成人患者を対象とする場合においても、こういったことを忘れないように意識しながら、家族看護という言葉を使用し、また実践していきたいと思う 以前、JSEPTICの論文紹介で、患者・家族のPTSD症状はお互いのPTSD症状やQOLに影響を与えるかもしれないという論文を紹介した。 http://www.jseptic.com/nursing_paper/update/np_003.pdf 集中治療室に入室した患者の家族は心にダメージを受ける。 そして、そのことが患者に直接、または患者を取り巻く家族というシステムを介して悪影響をおよぼさないように家族に看護を提供する、そういった意識をもつ必要があるのではないか (少なくとも患者ではなく、家族の中の構成員であるAさんの心のケアのみが目的であれば、家族看護というより、その人(Aさん)に対する看護といえないか?) そして、今回は、ICUにおけるケアが死亡した患者の家族の精神状態にどのような影響を与えるのかを検討した論文を紹介した その中で、緩和ケア相談やスピリチュアルケアの専門家やソーシャルワーカーの介入の有無では差は無く、人工呼吸療法から撤退の指示などが家族の精神的な合併症を減らしたといった結果が報告されている。 このことは「患者

身体拘束

身体拘束はせん妄を引き起こすとうデータもあるし、PTSDと関連しているというデータもある(両者ともそれほどエビデンスレベルが高い訳じゃないが)。 身体抑制はできるだけ無くしたいものだ。これはエビデンスどうこうの問題ではなく、道徳とか倫理観の問題である。 でも、身体拘束をしないとチューブ類を抜去されると言うひとがいる。滑稽なのは、彼らは患者のために抑制が必要だと言うことだ。(でも突っ込んでみると、インシデントを起こすことが怖いらしい)。 たぶん、抑制をしたがるひと(こういうひと、いるんです。実際。)は、拘束が重大な人権侵害だということに気がついていないのかもしれない。 自己抜去の怖さは組織文化にもよる。何かあると個人を責めるとか。で、このへんで患者のための抑制がここで自分を守るために抑制にすり替わってくる。 抑制をがっちりして、眠らせちゃえば自己抜去は確実に減少するはず。でも、浅い鎮静管理で人数も少ない中、どうやって抑制を少なくして患者を見るか(これは注意をどのくらい払うか、鎮静管理をどうするか、どうせん妄を評価するかを含めて総合的に判断する)が看護師のプロフェッショナリズムではなかろうか? 一件の自己抜管のために、99人を抑制するのは何か間違ってないかな。 もし、抑制しなくて自己抜去が起きたら、こう考えて欲しい。 ①それはそもそも不要なラインじゃなかったか。 ②抑制なしで他に抜かれないような方法がなかったか?ここでは適切な鎮痛や鎮静が大切になったりする。 これらをクリアした上で、抑制をしたくないけどすることになると思う。②でどれだけ良いアイデアが出るかが勝負じゃなかろうか。 いずれにせよ、抑制をしないという行為にリスクはつきものである。 リスクを負いたくないのであれば医療従事者の資格がない、といいきっちゃても、ざわつくだろうけど、ちょっとそう思う。 でも人手がない、という意見もよく気かれる。適切な鎮静鎮痛管理ができていれば人手はいらないんです。挿管患者に意識があったら見守りが必要というのは幻です。 そうじゃなくってもいつまでも人手のせいにできないでしょう。今できる環境のなかで最善はなにかを考えることが大切なのです。解決問題、例えばスタッフがすくない、なんて、騒いだって一緒なのだから、できる範囲でどうしようか前向きに考えることが大切

カテコラミンのシリンジ交換

カテコラミンの交換ネタです。 様々な施設で様々な方法が行われています。 今回の質問では、 ①交換する30~60分前となった時点で、シリンジにセットし、空流しを行い流量の安定化を図る ②15~30分前から新シリンジをセットし、旧シリンジと同量の流量で流し始める ③血圧をみながら、旧シリンジの流量を減量していき、切り替える が挙げられていました。 交換の際に問題となるのは、おそらく ①大気圧に向けて早送りしても、実際繋いだら静脈圧があるので逆向きの力がかかる。それに打ち勝つまでに時間がかかる。→実践的な解決は結構難しい。静脈圧と同じ圧だけ高位においておいて。。。などの方法もあるけど。。 ②シリンジポンプ自体安定するまでに時間がかかる。→しばらく指定の速度で流してから接続する。 ③シリンジポンプ〜三方活栓までのラインも抵抗になる。→ラインを付けたまま指定の速度でながす。 うちでは、①は解決できなかったので、②と③を組み合わせた方法を使っています。 つまり、交換の10分前くらいから、新しいシリンジにラインを付けて流しだす。それから普通に交換する。成人患者ではこの方法でおおむね安定しています。 みなさんのところではどうですか?

AACN 学会報告 part 2

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アメリカの学会第二弾、今年は行けなかったけど。。。 驚くことはいっぱいあるんですが、いくつか。 *参加費が高い!けど、学会は4-5日間ありますので、それを考えるとそうでもないかも。 *座長がいない。演者が相談して司会役をしたりします。座長は○○先生です。みたいなのがないんですね。一般演題で口演をやったときも座長はいませんでした。演者で話し合って、質問は最後にするかーとか話し合います。ポスターもポスターの前で話す時間が設定されているわけではなく、ある時間にポスターの前に演者が立つ時間が決まっていて、質問がある人が自由に質問します。(英語で困ったら、"email me later"です) なのでとてもフランクです。こういうのって手を上げて所属をいって、というのとかなり違いますよね。アメリカの学会では、個人情報は開示しません。Oralでも自由に話し合います。座ったままで質問をし、その質問の質問を他の人が初めて、フロアどうしでディスカッションが始まったりします。 *教育講演主体なのですが、教育講演は手上げ制です。自分で目的、目標を書いて、抄録を書きます。それを申し込んで、選ばれれば教育講演ができます。毎回、参加したらその評価を参加者から受けますので、その評価がいい方は、毎回同じ内容を講演したりします。講演は、ランク分けされており、ビギナー向けの内容からベテラン向けの内容まであります。どこかの教育講演聞きたいけど、別なセッションと重なって。。よくありますが、心配ご無用。教育講演は同じやつが日にちを変えて何回もあります。 *たぶん、担当校で持ち回りではないので、毎回、人気がある都市であります。Atlanta、Chicago, New Orleans、Washington D.C., Orlando, Bostonといったところです。 誰のための学会か?こういうことを考えてほしいですね。 こういう学会、日本であるといいなあ。

難渋するせん妄、イライラ感

質問です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は主に、心臓術後や生体肝移植後の患者さまの看護を行っているのですが、せん妄・不眠、気分がイライラする・不安感が強いなどの精神的症状や食欲不振に対するケアに日々悩んでいます。     せん妄や不眠に関しては、当院ではCAM-ICUなどのせん妄を客観的に判断するツールを使用していないこともあり、受け持つ看護師の主観で使用する睡眠 導入剤や鎮静剤を使用している現状にあります。イライラや不安感については、特に移植後の患者さまで多いです。創部痛や全身浮腫、倦怠感等の様々な身体症 状に加えて、移植肝がうまく機能するか、拒絶・感染等が起こらないか等の精神的な不安によるものを訴えられる事が多いです。もちろん、不穏症状をともなう せん妄状態の患者さまもおられます。    使用する薬剤はレペタン・アタラックスP・セレネース・プレセデックス・レンドルミン・リスミー・アモバン等で、精神科受診をするとリスパダールを主に処方されます。しっかりした根拠はありませんが、鎮痛と不安感の除去を主な目的に最初は  レ ペタンとアタラックスPを併用する。効果がない場合は翌日にレペタンとセレネースを併用する。不穏を伴うせん妄が強い場合は上記にプレセデックス200㎍ を生理食塩水50mlに溶解して使用(4~10ml/h)するケースが多いです。内服よりも点滴が優先される事が多いです。リスパダールで症状が緩和した 患者さまは、主観的ですがあまり多くないとおもいます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー そうですね、状況によって変化しそうですね。なかなか一般論では個々の症例に対応できない感があります。同じことをやっても効果があったり、効果がなかったりしますね。 せん妄で考えると、アルコール中毒を除けばベンゾジアゼピンは、投与後にハイパーになったりして、それに対してさらに催眠薬を追加し、結果として日中の覚醒が悪い印象があります。 もし、挿管しているのであれば、まずはプレセデックス、それでも効果がなければ時間を区切って眠ってもらう作戦でプロポフォールを朝まで投与することが多いです(必ず朝に切ること!)。(これが最もよいかは分かりません) こういうせん妄や

ABCDEバンドルとPain

そういえば先日アメリカクリティカル看護学会に参加したのですが そのときに思ったことをちらほらと書きます ABCDEバンドル関連の話がちらほらとあって しかも、ABCDEにs (sleep)つけたり、F(family)つけたりと・・・・ 逆に覚えるのが大変だなーと思いながら聞いていました。 そのセッションの途中で、そういえばABCDEバンドルって痛みに関する項目ってないなと・・・ それは患者に覚醒してもらう上で、致命的ではないのかと・・・ 覚醒させて、息させて、それを一緒にやって(鎮静剤を選択したり)、せん妄かどうかみて、運動して でも痛みはほっとかれてるように見えちゃう もしかしたら、あまりに、基本過ぎてバンドル項目に入れる必要がないと判断したのかもしれないけど・・・ しかし、基本的なことっていがいに忘れられがちですよね(バンドルは基本的なことを忘れずにやるためにあったりするのではないか)。 そうそう、今回看護部会でSleepに関する論文紹介をしました。よかったらどうぞ http://www.jseptic.com/nursing_paper/index.htm

ICUの空床と再入室、病棟でのCPA発生率

ある最近の研究より。 ICUベッドの空床状況と再入室、病棟でのCPAの関係。 ICUの再入室率は、空床が減少するごとに上昇した。(OR=1.06: 95%CI 1.00-1.12) サブグループ解析では、内科ICUベッドの空きと病棟での心肺停止率に関連があった。 Town, J. A., Churpek, M. M., Yuen, T. C., Huber, M. T., Kress, J. P., & Edelson, D. P. (2014). Relationship Between ICU Bed Availability, ICU Readmission, and Cardiac Arrest in the General Wards. Critical Care Medicine , 1.  いつもいっぱいに入れればいいわけじゃないんですよね。稼働をあげようあげようとして、本来ICU管理が必要のない(しかし、必要度は満たすかも)患者を入れると、稼働はあがるけど、ICUの空床がないということはCPAの発生率を挙げるかもしれないかもしれない。また、再入室が多くなる。 ICUに入れたら入れっぱなし、じゃなくて、適切なベッドコントロールが必要ということですね。

看護必要度。。。

4月からICUはA項目B項目ともに3点以上になりましたねー。 みまさんの施設ではどうですか? 主にポイントになるのはA項目なのですが、 輸液ポンプはまあ使うとして、心電図、使いますよね。問題はあと一点、A-lineかシリンジポンプですね。これからはA-lineが抜けるのに抜かない。不必要にシリンジポンプを使うなんてもあるかもしれません。これは看護師がびしっと言ってやらねば。みなさんも言いましょうね、必要度を基準にして無駄なラインを抜かないのは間違っています。 必要ないデバイスはさっさと抜いてください、と。でも、看護部からは看護必要度満たせと言われてたりしててね。 まあ経営は経営。ある程度必要度を満たさない人は出さなきゃ行けない。そうすると稼働が下がる。某病院では稼働が下がると看護部が文句を言う。でも下げないと看護必要度を満たせない。看護必要度も満たせという。これって無理でしょ?病院全体の重症患者の割合で決まるものだし。 聞いた話では病棟で、ICUの看護必要度を満たすひとはICUにおりて加算をとればいいとか。そうじゃないでしょ??集中的な治療とケアが必要な患者がICUの適応なんだから。もしICUに来てそれなりのいいケアを受けれるのならいいと思うけど、本来ICUが不必要な患者に対し、看護必要度を満たすためにICUにいれてお金を取るというのはどうかな。 私たちの指名は末梢一本だろうが、急変する可能性があるひとをできるだけ早くICUにいれること。それで急変しないように観察やケア、処置をすること。シリンジポンプがあるとか、ないとかは関係ない。かなと思ってます。 やばい、言い過ぎた?

スクイージングの科学性?

看護必要度にスクイージングが含まれていますね。 スクイージングは明確な根拠がなく、効果を疑問視する研究も出ています。 もしかしたら「神の手」ならできるのかもしれませんが、それであれば標準的な手技にならないでしょう。 スクイージングの不思議な点は、質の高い研究で証明されていない、つまりエビデンスレベルの低いものにるにも関わらず、異常に普及していることです。(もしかしたら、患者層を特定すれば有効なのかもしれませんが。。そこに突っ込む研究もないのが現状) なにがあるんでしょうね?

アメリカクリティカルケア看護学会へ参加して

先日アメリカのクリティカルケア看護協会(American Association of Critical-care Nurses; AACN)が主催する学会 National Teaching Institute & Critical Care Exposition (NTI)がデンバーで開かれ、そこで研究発表をしてきました。 学会というものの、その名が示す通り教育に力を入れた学会で非常に多くの教育セッションがあります。この教育セッションは、自分たち看護師のなかから公募で募り、教え、講義を受けた人により評価されるという形態をとっています。各発表の時の議論もすばらしく、質問の列ができます。そして、この教育セッションは受ける側も、する側もクリティカルケア認定看護師の認定制度のポイントになり、質を維持するためのシステムの一部になっています。また、机上の教育のみならず、各病院の管理教育?にも力をいれていて、職場環境の善し悪しを数値化数する作業に力をいれたり、その結果である医療の質の測定結果を集めて優秀なICUを表彰したりしていました。 また、お祭り的な雰囲気もあって、この1年で特に目立った活躍をした看護師の表彰などでは、みなが立ち上がったり、チアリーディングで使用するボンボンをふったりと非常に楽しそうでした。(運営する理事たちの選任も各学会員の投票(ネット)でおこなわれていて、そのお疲れ様的な発表もあったかとおもいます。) とにかく一貫しているのは、普通の看護師それぞれが、みんなで協力してクリティカル看護を盛り上げていこうとする姿勢で、それが優秀なICUや人物の表彰や教育方法などの学会運営システムに反映されていると感じました(そういえば、発表者は大切にされていて学会参加費が安くなります)。日本の学会では、少なくともこういう雰囲気(私たちの学会という雰囲気)はないなと、思います。いったいなぜ、そうなのかはわかりませんが。。。。(そして、誰のための学会なのか、も。。。) 帰国して思ったことは、 日本のクリティカル看護を盛り上げられるよう、少なくとも私がクリティカル看護を楽しもうということでした。 そして、私が楽しんでいる雰囲気が、周りの誰かに伝わりますように。

RASS評価時のアイコンタクト

RASS-1は、完全に清明ではないが呼びかけに対して10秒以上のアイコンタクト、とあります。10秒以上のアイコンタクトとは、連続した10秒以上つまり凝視している状態のことをいうのでしょうか? 日本人はなかなかアイコンタクトを継続する習慣がないので、継続ではなく、断続的なアイコンタクト合計10秒ではだめでしょうか?という質問です。 ーーー 原文では、sustained for more than 10 seconds とあります。ここでのアイコンタクトは、指示に従うといいうのみでなく、注意力を継続することができるか?をみているので、やはり、継続できなければなりません。「こちらを見続けてください」と指示して、みてもらうしかないです。特にRASSは、せん妄のスクリーニング的な側面も持ち合わせているというのが売りのひとつなので、継続できること、がポイントになるかと思います。 参考文献 卯野木 健ほか、成人ICU患者においてはどの鎮静スケールが有用か?日本集中治療医学会雑誌15(2)179-188 2008 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/15/2/15_2_179/_article/-char/ja/

A-lineからのカテ感染

A-lineからのカテ感染っていうのはあまりメジャーじゃないかもしれないけれど、実際にはどの程度あるのでしょう? Critical Care MedicineのAhead of Print(これから発行される)から O’Horo, J. C., Maki, D. G., Krupp, A. E., & Safdar, N. (2014). Arterial Catheters as a Source of Bloodstream Infection. Critical Care Medicine , 1.  49件の論文をメタアナライシス(ようするにたくさんの論文を統計学的に統合して結果をみた)し、A-lineからのカテ感染がどのくらいあるのかをみた研究です。 結果は、1000カテーテルデイズあたり、0.96件の発生。このカテーテルデイズ(catheter days)あたり、○○というのは、挿入日数を合計し、そのうち何件発生したかをみる方法。Aさんが3日間、Bさんが10日間、Cさん7日間、A-lineを挿入されていて、Bさんにカテ感染ということになった場合、3+10+7= 20 catheter daysに1件起こったことになる。この20 catheter days を1000に直して算出したのが、「1000カテーテルデイズあたり**」になる。 雰囲気で言うと、10日間A-lineが入り続けている患者が、100人いたとして、そのうち1人がA-line由来のカテ感染を受けているかも、という感じ。これは研究によっても異なって、ルーチンにカテ先の培養を行っている研究だけ取り出すと、1.26/1000 catheter daysと少し上昇するそう。 ちなみに、CVの場合、2.5 / 1000 catheter daysあたり*みたいだから、その半分くらいの発生率らしい。思ったより高い? *Marik, P. E., Flemmer, M., & Harrison, W. (2012). The risk of catheter-related bloodstream infection with femoral venous catheters as compared to subclavian a

鼻腔、口腔、気管のうち、どこから吸引するのが、正しいのでしょうか?

JSEPTIC_Nursing メーリングリストからの転載です。   諸説ありそうですね。鼻腔と口腔どちらかはおいておいて、上気道と下気道に分けると、 割とよくみられるのは、気道(下気道)よりも先に口腔(鼻腔、上気道)を吸引するというものです。 その理由としては、気管吸引時に上気道から下気道にむかって垂れ込みが起こるという説が挙げられています。 この説は?と思うことがあって、なぜなら、咳嗽反射があれば気管吸引時にはカフより末梢の気道内圧は陽圧になるので、分泌物の移動はカフ上部→カ フ下部ではなく、むしろカフ下部→カフ上部になると思われるからです。 実際に、気管吸引すると口腔内から喀痰が引ける場合がありますよね。 なので、気管吸引時に上気道から下気道にむかって垂れ込みが起こるという説はどうかなと思っています。 反対に下気道から先に吸引するという意見は、昔の吸引カテを使い回していた時代(下気道から先にすると吸引カテが一本ですむ。)の名残なのかなと 思ったりします。(ただ、先ほどの「気管吸引すると口腔内から喀痰が引ける場合がありますよね」現象から言うとこの説にも説得力があります。) どちらを先に吸引するかという研究は私の知る限りないかと思います。なので、個人的にはどちらでもいいのではないかと思います。個人個人で、 どちらが先という慣れや考えがあるかと思いますが、ほかのひとに「こちらが先じゃないとだめでしょ!」と押し付けるだけの根拠はないかと思い ます。「まあ、いろいろなやり方があるよね。どちらでもいいんじゃない」というのが私の意見です。 助けになっていれば幸いです。 ーーーーーーー つぎのような意見もあります。 少し論点がずれてしまうのかもしれませんが、鼻腔吸引が特に必要となるのは非挿管患者でかつ口腔内まで喀痰できない患者かなと思います。つま り、意識障害がある患者とか、嚥下障害や筋力低下などで喉頭周辺で分泌物がゴロゴロしている場合とかでしょうか。そういった患者の吸引は本来、口腔内から が理想的なのでしょうが(鼻腔粘膜損傷のリスクとかで…。)、口を開けてくれなかったり、開けてくれても吸引チューブを

せん妄は一枚岩ではない

人工呼吸、鎮静管理を受け、DIS protocolを行う患者に対し、DIS (Daily Interruption of Sedatives)前後でRASS、CAM-ICUを比較した論文より。 102人の患者から251回のDIS前後のCAM-ICUデータを得た。 うち、5回は昏睡状態でCAM-ICUでの評価ができないので除いた。つまり、246回の評価で分析を行った。 DIS前の評価では、246回中218回でCAM-ICUは陽性であった。 しかし、そのうち63名はDIS後の評価ではCAM-ICUは陰性になった。→ここで陰性になった患者は、鎮静薬によるせん妄と考えられる(Rapidly-Reversible, Sedation-Related Delirium)。 両方ともせん妄であった患者は、鎮静薬の影響はないとはいえないけれど(もっと時間をかければ変化があったかもしれない)、とりあえず"Persistent Delirium"(継続するせん妄)とした。 あとは、DIS前後でCAM-ICU陰性の患者がいるので、そういう患者はNo Delirium。 一人の患者で両者が混合する場合を"Mixed"と名付ける。 患者ベースで考えれば、102人の患者のうち、 No Delirium (ND): 10人 Rapidly -Reversible, Sedation-Related Delirium (RRD): 12人 Persistent Delirium (PD): 51人 Mixed: 24人 に分けることができる。 とりあえず、RRDの12人は鎮静薬によるせん妄と考えてよさそう。ちなみにそれぞれのグループにおける鎮静薬の種類には有意な差はない。 で、せん妄患者の予後。いままではせん妄は予後悪化と関連していると言われてきた。この研究で面白いのはここ。 1年後死亡率をみると、 No Delirium (ND): 20% Rapidly -Reversible, Sedation-Related Delirium (RRD): 25% Persistent Delirium (PD): 66% Mixed: 54% であった。 並べると、死亡率が高い方から PD>

気管切開後のYガーゼ:どのくらいの期間挟む?

当院では、明確な基準はないのですが、気管切開直後から 1 〜 2 週間程度挟んでいます。 出血が治まり、浸出液や分泌物が少なければ、挟まない方がいいのではないでしょうか? カニューレ挿入部周囲は、分泌物や酸素加湿により湿潤状態にあり、緑膿菌などの付着や生産に最適な状態と言えます。したがって、感染予防や観察が重要です。 出血・浸出液・分泌物が多く、衣服などの汚染が懸念される場合は、 Y ガーゼを挟んだ方がいいですかね。しかし、菌の増殖の原因となる可能性があるため、汚染に気づけば交換します(頻繁な交換が必要なときも...)。 挟まない方が観察はしやすいですよね。 人工呼吸器装着の有無にかかわらず、ネックフランジと皮膚の接触部にトラブルを生じたという経験がないため、皮膚トラブルを予防する目的で Y ガーゼを挟んだことがありません。 ただし、ネックフランジが皮膚に接触することを患者が不快に感じるなら挟んでもいいですし、 Y ガーゼを不快に感じるなら外すといいでしょう。 予防的にということであれば、皮膚皮膜剤や皮膚保護材を使用した方がいいかもしれません。 みなさんの施設ではいかがですか?

CAM-ICUで自己抜管を予測できる?

せん妄のスクリーニングを看護師がなぜやってるか? といえば、多臓器不全の一種だから、とか、死亡率の上昇に、と答えるのは以外と少数派かもしれない。 看護師がみたいのは、自己抜管しちゃったりするか、だったりする。それを予測するツールとしてせん妄スクリーニングを使う分けだ。では、これはあたっているのか? 実際の経験では微妙な印象もある。いません?CAM-ICUはNegativeでも怪しいひと。CAM-ICUはあくまでせん妄のスクリーニングであって、自己抜管するかどうかを予測しているわけじゃない。 もちろん、せん妄であれば自己抜管するリスクは高まる。しかし、絶対ではない。いわゆるHypoactive Deliriumで抑制なしでも問題ない患者もいるので。 1)せん妄の患者がすべて自己抜管するわけではない。 2)自己抜管する患者はすべてせん妄ではない。 なんだろうかと思う。じゃあ、せん妄のスクリーニングは自己抜管予測に役に立つのか? たぶん、使える。でも、もともと自己抜管予測のために作られたものではないので、それを踏まえておく必要はある。CAM-ICU Negetiveなのに抜かれてしまった、CAM-ICUは意味あるの?という考えは少し間違っていると思う。せん妄スクリーニンングツールはせん妄をスクリーニングするものであって、自己抜管が起こるかどうかをスクリーニングしているわけじゃない。でも、せん妄の患者はせん妄ではない患者と比較して高い確率で自己抜管をしてしまうと思う。 もしかしたら自己抜管しそうかどうかにはさらに別のスクリーニングが必要かも?

海外論文

どうやって論文をチェックするの?という質問が良くあるので、ただの我流ですが、紹介します。 まず、主要な論文はe-alertでチェック。 何が主要論文かと言えば、個人的には Critical Care Medicine 「CCM」よばれる。 Intensive Care Medicine 「ICM」とよばれる。 Critical Care ですかね。これらは新しいのが出ればメールを送ってくれるシステムがあるのでそれを利用。Twitterでも同じようなことやってます。 もちろん、CHESTやAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine (AJRCCM)も重要な雑誌だと思いますが、そこまで手は回らない。全部医学雑誌じゃないか!看護の雑誌も出せ!と怒る方もいるかもしれませんが、これらの主要紙には看護師の論文も結構出るし、できればこういうところに出したいという看護の研究者は多い。看護の雑誌、医学の雑誌と分けるんじゃなくって、Critical Care を題材にしてそれぞれがテーマに即した論文を投稿する、というのが大切なことだろうと思うし、実際に割とそうなっています。Critical Care Medicineにも看護師による研究があるし、看護に役立つ論文もたくさんある。 看護の雑誌としては、 American Journal of Critical Care があります。情報量は主要論文に比べると随分少ないけれど、主要論文に掲載されなかった看護の論文はここに集まるといっていいかと。 もちろん大御所のJAMA、Lancet、New England Journal of Medicineというクリティカルケアに限らない雑誌もたくさんあります。これらにのるクリティカルケアの論文は注目度の高いものが多いです。 そんな感じです。誰かの、何かのお役にたてば。

接触隔離とインシデント

接触隔離を行っている場合、Medical Errorがおこりやすいという論文を少し。 Zahar, J. R., Garrouste-Orgeas, M., Vesin, A., Schwebel, C., Bonadona, A., Philippart, F., et al. (2013). Impact of contact isolation for multidrug-resistant organisms on the occurrence of medical errors and adverse events. Intensive Care Medicine , 39 (12), 2153–2160.  2つのICU、1221人からのデータ。接触隔離を行っているか否かとMedical Errorと有害事象の関連を調査した。Medical Errorとしては、抗凝固薬の処方、管理ミスとインスリンの処方、管理ミスを調査。有害事象としては、計画外抜管やVAP、出血、高血糖あるいは低血糖などを調査した。 結果としては、計画外抜管やVAPには差はなかったが、抗凝固薬の処方ミスが多く(HR: 1.9 [1.1-3.3])、高血糖(HR: 1.5 [1.2-2.0])、低血糖(1.5 [1.0-2.1])が多かった。 原因としては、カルテが部屋の中にあるので、足が遠のくかもしれない、ことが挙げられるとのこと。 なるほどねー。と思ったので紹介してみました。電子カルテは部屋の外にあることが大切?なのでしょうか。

ステロイドとせん妄

ステロイドはせん妄のリスク因子になるってことは広く知られてますけど、 では、ICUのALI患者ではどないなってん?って論文。 Schreiber, M. P., Colantuoni, E., Bienvenu, O. J., Neufeld, K. J., Chen, K.-F., Shanholtz, C., et al. (2014). Corticosteroids and Transition to Delirium in Patients With Acute Lung Injury. Critical Care Medicine , 1.  520人のALI患者を対象にした前向きのコホート(患者群を追ってゆく)研究。 研究デザインの分類に関しては下のリンク参照してください。 http://www.metamedica.com/yogo.html 結構面白く、臨床で有意義な研究手法です。 結果は有意にステロイドとALI患者のせん妄に関連があるということです。 ステロイド使っている患者をみる場合は要注意や。 実は研究手法もなるほどなーと思うところもあるのですが、また後日にでも。

2014 日本集中治療医学会

集中治療医学会終わりましたねー。 大盛況な様子でしたね。 行った人も行ってない人もおつかれさまでした。行けなかった方も病棟を守っていただいた訳で、ありがとうございます。 今回は身体拘束に関してJSEPTICのデータを使ってお話させていただく機会をいただきました。アンケートに参加していただいた方、厚く御礼申し上げます。反響はあったようで、自施設で考えるきっかけになれば幸いです。 こういうアンケートを使って、まず、「現状」を明確にし、目的地をみんなで考えられればいいですね。今後ともそういうこと、やっていきたいと思いますので、アンケートを作りたいかたがいれば、 jseptic_nursing@jseptic.com までお送りください。アンケート班が協力いたします。 あと、このアンケート結果は、新創刊の「ICNR: Intensive Care Nursing Review」に詳しく考察を交えて書いていますので、ご興味があればそちらもどうぞ。 ICNRはこういうのやってほしい!などのご意見も受け付けています。ご意見は、上記のアドレスに送っていただければと思います。

看護研究 パート2

3年目とかになれば強制的にやらされたりする研究ですが。。。ちなみに個人的には研究は好きな人がやればいいと思ってます。いろいろな働き方は許容すべき。仮にまじめにやろうと思っても、病院の看護職員は研究者番号もらえなかったりするしね(研究資金を得るのが困難だし、労務上、研究は職務に入っていない。)。 とはいえ、現状を明らかにしたり、よりよいケアを追求するには研究は重要なこと。 少し前からだけれども、看護に関連して、生物学的データを使用した研究を看護師がやるムードができつつある。(アメリカでは6年前くらいからその辺、ちから入れてる印象がある) 今まではストレスを計るにしても質問紙だったのが、それと同時に血清のストレスに関連するホルモンやサイトカインを計ったりしてね。まだまだ途上ではあると思うけれど、幅が広がるのはいいんじゃないかなー。 これは最近出た看護師の論文。IL-6とアポプロテインEが重症患者のせん妄に関連しているんじゃないかという研究。すでにたくさん言われているけど、やっぱり環境だけじゃなくって炎症や侵襲も関連してそうだね。 Alexander, S. A., Ren, D., Gunn, S. R., Kochanek, P. M., Tate, J., Ikonomovic, M., & Conley, Y. P. (2014). Interleukin 6 and apolipoprotein E as predictors of acute brain dysfunction and survival in critical care patients. American Journal of Critical Care , 23 (1), 49–57.  ちなみにAmerican Journal of Critical Care は医学系の論文も出せなくはないけど、基本的にはアメリカクリティカルケア看護協会の雑誌なので看護系の雑誌。 Dr Alexanderは看護師でピッツバーグ大学看護学部の教員。昔からSAHのバイオマーカーの研究をやってたひと。 日本ではそれは看護の研究なのかとか医学の研究だとかいろいろ言う人がいるけど(生物学的なアウトカムを嫌がったりね)、臨床でやってれば、看護に「関係」しているかどうかわ

ARDS患者への腹臥位

ARDS患者に対する腹臥位療法に関しては、 酸素化は改善するが死亡率に差はなかったとする2001年のGattinoniら*のRCTがあって、臨床適用にはどうなんだろう、と思っていましたが。。 昨年、PROSEVA study**で重症ARDS患者(P/F<150)には腹臥位療法が死亡率を低下させるという結果がでましたね。(Gattinoniらの研究でも重症低酸素血症患者を対象にしたサブグループ解析では良い結果が得られていたのですが) ちなみにPROSEVAっていうのは、The Proning Severe ARDS Patientsの略らしい。かっこいい名前つけるね。 このPROSEVA studyは最低16時間の腹臥位を毎日行うというものなのですが、詳しくはJSEPTIC journal clubを参照するとよいと思います。 http://www.jseptic.com/journal/jreview_144.pdf で、私たちにとって見ものなのは、その結果とか方法だけじゃなくって腹臥位の方法。是非ご覧あれ。シーツ交換もできて一石二鳥。。 https://www.youtube.com/watch?v=E_6jT9R7WJs *Gattinoni, L., Tognoni, G., Pesenti, A., Taccone, P., Mascheroni, D., Labarta, V., et al. (2001). Effect of prone positioning on the survival of patients with acute respiratory failure.   The New England Journal of Medicine ,   345 (8), 568–573. **Guerin, C., Reignier, J., Richard, J.-C., Beuret, P., Gacouin, A., Boulain, T., et al. (2013). Prone positioning in severe acute respiratory distress syndrome.  The New England Journal of Medicine ,  368 (23), 21

ローテーションなどなど

これは施設によって違うが、看護師ではローテーションをしながら管理職になるというコースが伝統的に続いている。医師で言えば、小児科にずっといたってそのトップにはなれず、膠原病内科で管理をやったり、代謝内科でやったりするのと同じだ(でもトップになるときは小児科ではないところがポイント)。いくらICUが好きでも、管理職になると、他の部門に移動させられるのだ。 これは管理職は特定の分野における専門家たるべきではなく、管理の専門家たるべきという発想からきていると思う(それはそれで悪いことじゃないかもしれない)。なので、例えばICUの看護師長は2-3年おきに変わることは珍しくないし、もちろん彼女(彼)たちはICUの専門家ではないので、看護師主導で鎮静を行うことが重要か、とか、せん妄の評価を導入するとか、SBTとか、そういうことに関する知識はあまりない(ずっとICUのひとが化学療法の知識がないのと同じだ)。 理解のある看護師長だとよいだろう。うまくスタッフにそれらを任せて自律性も上げ、やる気に繋がるかもしれない。でも、SBT ってなに?それは医師がやる仕事でしょ。せん妄は勘で分かるでしょ?○○は看護部に聞いてみなきゃわからない(たいてい却下される)などの意見をもっている方だとちょと厳しい。その下にいるやる気のある看護師は苦労するだろうな。あと、できるだけ病床数を減らすのが役割と思っている勘違いさんもいる。(それがスタッフを守る自分の責任だと思ってる)。 何でもかんでも医師にやらせて、それで責任を回避できると思っている節もある。患者からみれば慣れない研修医よりも看護師がやった方がよい場合でも研修医にやらせる。私たちは輸血はつなぎません。KCLは投与しません。指示があっても(On-Offのときの)人工呼吸器を外しません、カテコラミンのシリンジ交換は医師の仕事です。こんなことはたくさん実はある。 患者にとってどちらが安全でタイムリーかを考えず、こっちは忙しいとか(医師だって忙しいだろう)労働組合みたいになっている。。。気もする。だいたい忙しいとか言い出したら水掛け論になるでしょ?であれば、どちらが患者にとって有益かを考えなきゃ。過激でしょうか。

ICU患者の睡眠

ICUにおける睡眠に関しては、まだまだよく分からないことがあるのだが、調べられてはいる。 とりあえず分かっていることは、浅い眠り、というかまどろみであるStage 1、Stage 2が多いということと、REM睡眠が少なくなるということ。REM睡眠では、脳は覚醒時と同じ、あるいはそれ以上に活動している。しかし、体は動かない状態。おそらくこの睡眠には何らかの役割があるのだろうけれどもよく分かっていないそう。 Stage 1、2とREM睡眠が少なくなると、相対的に深い眠りである除波睡眠は少なくなる。あと、覚醒が頻回になることも特徴。 簡単にいうと、浅い眠りですぐに覚醒するという状態にあるらしい。 これはどんな理由によるのかというと、いろいろな要因があるっぽい。 簡単に想像できるのは、騒音や光。特に騒音は患者が感じる「起こされた」原因みたい。 他にも、鎮静剤の影響もある。鎮静剤は確かに意識レベルを低下させる方向にもっていくのだけれども、以前ブログにあったように、REM睡眠を少なくする。 また、疾患、特に敗血症は睡眠の質を変えてしまうみたい。なので、環境だけ整えればぐっすり、という訳でもない。もちろん、環境を整えることは重要だが。 そもそも睡眠の目的、役割自体がまだまだはっきり分かっていないので、これらが患者に与える影響はよく解明されていない。REM睡眠が短いことがどのように影響するのか?とかね。 今後の研究に乞うご期待。 Elliott, R., McKinley, S., Cistulli, P., & Fien, M. (2013). Characterisation of sleep in intensive care using 24-hour polysomnography: an observational study. Crit Care , 17 (2), R46. doi:10.1186/cc12565

医師、患者が疑問に思う必要のある5つ事項

最近、話題の 「Five Things Physicians and Patients Should Question」を翻訳してみました。意訳している箇所もあります。 よかったら参考に一度読んでみてください。 本文は http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/critical-care-societies-collaborative-critical-care/ 医師、患者が疑問に思う必要のある 5つ事項   1.              ルーチンで毎日検査を行うのではなく、特定の疑問を明らかにするために検査を行う。 多くの検査(胸部X線、動脈血ガス、採血、心電図を含む)は、定期的(例えば毎日)にオーダーされる。ルーチンな検査は、特定の疑問に対して必要時検査を行う方法や、治療方針を決定するために必要な検査を行う場合のみ検査を行う方法と比較して、医療費を増加させ、患者に利益がなく、もしかしたら患者に害を与えるかもしれない。不要な採血は、輸血を必要とする貧血の原因になるかもしれないことや、 ルーチンの検査で生じる意味のない検査値に対して精密検査を行うリスクも含まれている。 2.              血行動態が安定し、出血がなければ、 ヘモグロビン濃度が 7g/dL を越える ICU 患者に 赤血球輸血をしない。   ICU において 赤血球輸血は、循環不全を引き起こす急性出血よりも良性貧血に対して行われている事が多い。すべての ICU 患者を対象にした 研究によって、ヘモグロビン濃度 7mg/dL を基準に 赤血球輸血を行うことは、それ以上のヘモグロビン値を基準に赤血球輸血をした場合と比較して生存率は変わらないか改善、合併症の低下、コストの削減と関連していた。積極的に輸血することは資源の少ない輸血の入手を困難にするかもしれない。 ACS 患者では輸血投与の基準値が異なる可能性があるが、大部分の観察研究ではこのような患者に対する積極的な輸血の有害性が示されている。 3.              ICU 入室後最初の 7 日間以内には、十分な栄養状態の重症患者には静脈