せん妄は短期予後と関係がない?

久しぶりにせん妄ネタを

せん妄の期間が長いほどは死亡率が高いなどよく言われる。

Pisani, MA, et al. (2009). Days of delirium are associated with 1-year mortality in an older intensive care unit population. American journal of respiratory and critical care medicine, 180(11), 1092-1097.

がしかし、これらの多くは観察研究だ。

それと、以前このブログでもせん妄は一枚岩ではなく、もしかしたら、予後にあまり影響を与えないタイプ(せん妄の原因によっては)もあるかもしれないと、別の方が紹介していた。
が、これも観察研究で、あまり大きなことは言えない

また実際のせん妄をターゲットとした介入研究では、せん妄の期間を短く出来るが死亡率まで改善するに至らなっていない
これら、せん妄をターゲットとした介入研究の多くは、死亡率などを評価するには対象者の数が小さすぎるといった批判もある

そこで、せん妄期間を減少させるための介入研究(RCT)とその短期死亡率に関して行われた今回の論文を紹介します

Al-Qadheeb, NS, Balk, et al. (2014). Randomized ICU Trials Do Not Demonstrate an Association Between Interventions That Reduce Delirium Duration and Short-Term Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis*. Critical care medicine, 42(6), 1442-1454.

この論文では、いくつかの論文をまとめて評価して何か言えないかなーとあれこれ考えるMeta-Analysisという方法を使用して、対象者が少ない事の影響を少なくしようと試みている。

対象となったのは全部で17論文

Risperidone(リスパダール)、Quetiapine、ZiprasidoneなどのAntipsychotic therapyが4論文
Clonidineが1論文
Dexmedetomidine(プレセデックス)を、Propofol、Midazolam、Haloperidolなんかと比較したものが6論文
Rivastigmineが2論文
非薬剤療法として、DIS、SAT+SBT、Early mobilization、術中の還流圧を高値に維持する介入が4論文

この研究の結果は
全ての介入をまとめて評価すると平均のせん妄期間は減少するが、短期死亡率は減少しない
そしてせん妄期間と死亡率の間には関連がみられない、というものだ。

せん妄は、あくまで観察される結果であって原因ではないから、原因と関係なくせん妄症状を抑え込んだところで、予後にはあまり影響しないのか?
せん妄症状を抑え込もうとするAntipsychotic therapyとRivastigmine、Clonidineが全論文の41%(7/17)だしなー

はっきり言ってこのMetaは、介入も、対象も、たぶんせん妄の原因もばらばらだ。
この結果で、どこまで、何が言えるかよくわからない

せん妄の原因をある程度絞って、かつ、原因を根本的に解決する介入なら結果が違いそうなのになぁ
せめて、鎮静剤がらみのRCTだけでの比較結果がしりたかったなぁ

せん妄、考えれば考えるほど、わからないなー
せん妄が色々な原因による症状のまとまり(症候群)だからわからなくさせるのか
いっそうのこと、ICUシンドロームみたいにこの言葉も使わなくしてしまったらどうだろう、同じ症候群だし・・・
でもそれじゃ研究が前に進まない
とりあえず今はこの混乱を、自分自身も新たなデータを出しながら耐え忍ぶしかないのか

ほとんど独り言のようになってしまった、すみません。。。。

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